6月 09, 2019

沢田英男展を終えて

6月2日まで行なっていた沢田英男展には沢山の方にお越しいただきまして、本当にありがとうございました。
これまでのAnalogue Lifeの企画展とは全く異なり、彫刻は実用的なものではないため、どのくらいの方が反応してくださるのかとても不安でした。しかし、本当に多くの方がご来場くださり、それぞれの作品に自分の想いを投影させている姿が印象的な展示となりました。

私自身も展示を終え、改めて自分がタイトルにした「投影」について想いを巡らせていた時に、ふとある作家との会話を思い出しました。 彼女は染織作家で彼女が制作する布を見ながら、私が好きなものについて話をしていた際に口から出てきた言葉だったのですが、「手紡ぎのポコポコと糸が不揃いになっているそのテクスチャーに惹かれる」と。また、「綺麗に織られたものより、素材がより感じられるもの、木製品なら、穴があいていたり歪んでいるもの、朽ちたものに美しさを感じます。それは私が平坦な道を歩んできていないから、そういうものに惹かれるのだと思います」とも。沢田さんの展示で「投影」というタイトルをつけ、改めてその意味を考えた時に、私自身がお店でセレクトしているものに、自分の人生を投影していることに気づきました。不完全なものから感じる美や時を重ねることでしか生まれない美しさ、また朽ちていく姿に儚さや寂しさを感じ、それが自分の人生と重なって心動かされるものをつい手に取ってしまうのだと、はっきりとわかりました。綺麗なものへの憧れよりも、自然のあるがままの姿は時に残酷だったりもしますが、そこからしか生まれない美しいものや感情に私は惹かれるのだと思います。

今回展示をする際に、作品の隣にタイトルを書きましょうか?と沢田さんにお聞きしましたが、タイトルを見ると先入観にとらわれてしまうので、その方それぞれの想いで見ていただければとおっしゃっていたのですが、使いやすさなどが重視される器の展示とは違い、今回の展示のようにどれを選んでも正解で、自分の感性に任せて選んだ1点はいつまでも心に残り、大切なものとなるはずです。

情報の多い世の中に左右される事なく、自分らしさを大切にするきっかけや、自分と向き合う時間をくれた沢田英男展は私自身も大変勉強になりました。
また2年後に行う予定の沢田さんの展示では、彼の作品の中にどんな自分を映しだすのでしょうか。今からとても楽しみです。。。

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