「南部鉄器」といえば、岩手の伝統工芸品として知られていますが、産地である盛岡と水沢ではその歴史は少し異なります。盛岡の南部鉄器のはじまりは400年程前、南部幡主が京都から釜師を招きお茶道具を作らせたのがはじまりと言われています。また、水沢は盛岡よりも歴史が古く、900年程前に滋賀県から鋳物師を呼び寄せたのがはじまりとされ、その当時は農具などの生活道具を制作していました。お茶道具を作る盛岡は、伝統的な焼型を用いて芸術性の高い鉄瓶などを制作する工房が多く、水沢には生型を使い、比較的量産ができて価格の安いものを制作する工房が多いそうです。
これは、岩清水さんにお店にお立ち寄りいただいた際に教えていただいたお話。南部鉄器の長い歴史を持つ岩手で生まれ育ち、全く違う分野に進んだ岩清水さんは、岩手に戻り南部鉄の生産やデザインに携わった後、3年前にご自身の工房「空間鋳造」を立ち上げられました。岩清水さんが過去に携わった南部鉄の急須はNYのMoMAでも取り扱いされた程の実力の持ち主。ただ、そこに留まるのではなく、常に先を見て進化を続ける岩清水さん。ここ最近では、伝統工芸品も、技術や精神は引き継ぎながらも、時代にあったものを提供していかなければ衰退していくということを、多くの方が感じている事だと思いますが、岩清水さんのように違う分野で活躍し、色々なものを吸収、そして、咀嚼しながら向き合い制作する南部鉄器は、必ず新たな風を呼び込み、次の世代に受け継がれていくのではないかと思います。一言で、伝統というのは簡単ですが、その裏にはそれに携わる方の並々ならぬ努力や挑戦があり、私たちにできる事は、ものの良さを伝え、より多くの方に実際に使っていただけるようにする事だと考えます。無駄を削ぎ落とした岩清水さんの美しい急須をぜひご覧下さい。
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